「オネーギン」 シュツットガルト・バレエ団 11月30日 その2
新しい洋服のことよりも、本の世界に没頭するタチヤーナ。その中味には、彼女の体験したことのない様々な世界が広がっているのでしょう。その虚構の世界に浸るタチヤーナの前に初めて現れた、実像としての存在感を持つ男性、オネーギンに若いタチヤーナの心は鷲掴みにされてしまいます。
第1幕第2場、オネーギンに宛てた恋文をしたためるタチヤーナ、そのタチヤーナの寝室の鏡の中からオネーギンが現れ、二人のパ・ド・ドゥでは、タチヤーナ、いきなり真白な脚を天をつくように伸ばすリフトで、感情をほとばしらせます。
自分の熱い恋心をオネーギンに投影させたかのようなタチヤーナの踊りは、第1場のどこか遠慮がちにオネーギンに近寄りたくて、でも近寄れずパ・ド・ブレで戸惑っていた様子とはうってかわり、一途で大胆なものに変化をとげていきます。
そのタチヤーナのアイシュヴァルトの動きは鋭く正確でスピード感に溢れ、また、オネーギンのバランキエヴィッチによるリフトは高く高く、まるで、タチヤーナの女性としての成熟していく様子を表現し、愛の歓びが聞こえてくるようでした。
オネーギンへの愛をほとばしらせたタチヤーナ、続く場面では、残酷にも、オネーギンへの恋文を、オネーギン自身の手により引き裂かれるのだけれども、第3幕では、グレーミン公爵とのまた違った愛の形を育んでいったタチヤーナが、今度は逆にオネーギンからの手紙を引き裂き、彼に自分の前から立ち去るように決然と告げます。
その結末に至るまでのタチヤーナ、終幕のパ・ド・ドゥでは、まるで気を失うようにオネーギンに倒れこむ動きなどの、スピード感のある、まるで切れ味の優れたナイフで空間を正確に切り取っていくようなアイシュヴァルトのムーヴメントが、タチヤーナのオネーギンへの気持ちに真摯に向かい合う自分の心の内を最も効果的に激しく美しく表現していていました。その緊迫感が、オネーギンに自分の目の前から消えるようにと指し示すポーズに凝縮されるラストは比類ない厳しさで、強く心に残るものでした。(続く)
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