FC2ブログ
2012.03.15 (Thu)

「さまよえるオランダ人」 新国立劇場 3月11日 14:00 その3


新国立劇場 2012.3.11  


ゼンタのジェニファー・ウィルソン。まずは、(一体どれだけの布地が費やされている?)衣装の空色の膨張感に度肝を抜かれた。肖像画のオランダ人を救うのは自分、と強く思い込んでいる、どこか浮世離れした乙女ゼンタと、このヴォリューム感を結びつけることのできなかった第一印象は、あっという間にくつがえされてしまった。

特徴ある音型で始まるゼンタのバラード。下行していく前にまず発せられる高音の思い切りよい声量に心を奪われた。なるほど、圧迫感あるスタイルは伊達ではない。美しい音色を発する楽器として、視覚的にも説得力豊かなウィルソンのゼンタにだんだんと惹き込まれていった。

第3幕、終盤のクライマックス。ゼンタに別れを告げ、あなたを道連れにしたくない、と彼女の手を振り払うオランダ人。標準的な女性ならば、力も強そうなニキティン・オランダ人に振りほどかれただけで、簡単に地に倒れこんでしまうところだろうけれど、ウィルソンはそういうわけにもいかない。倒れるのにも、前準備が必要となってくるのだ。しかし、それも些細なこと。ここからのオランダ人とゼンタのクライマックスには、目も耳もぐいと奪われてしまった。

力強い高音でオランダ人に苦しみの終わりを告げた、人間離れした感ありのゼンタは、上を仰いだ歓喜の表情のまま、船と共に暗い海中に沈んでいく。ゼンタの劇的な献身を目の前にしたオランダ人に注ぐ一筋の白い光。膝を折り、力なく崩れ落ちてしまうオランダ人が一瞬浮かべた笑みは、ゼンタの思いへの答えか。うつぶせに横たわったまま、やがてゆっくりと目を閉じたオランダ人。彼の命の火は、静かに静かに消えていく・・・・・なんと美しい救済の力であったことか!


関連記事

テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

EDIT  |  23:55 |  オペラ  | TB(0)  | CM(0) | Top↑

コメントを投稿する

URL
COMMENT
PASS  編集・削除に必要
SECRET  管理者だけにコメントを表示
 

この記事のトラックバックURL

この記事へのトラックバック


 | HOME | 

最近の記事

カテゴリー

カレンダー

FC2カウンター