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2011.06.14 (Tue)

「ランメルモールのルチア」 MET 6月12日 15:00 東京文化会館 その2

第1幕、ダムラウすごし。声がまるで羽根がはえているように、軽々と空気に乗っていく。高音から低音にも、自在に移動。空間を転がる声に、ただ陶酔して耳を傾けるばかり。コロラトゥーラを駆使してエドガルドへの恋の喜びを表現したダムラウ、ブラヴォーの拍手を受ける間の顔の前で手を組み夢見るような笑顔に、愛する人への思いがこもる。ストーリー的にはごくごく単純なオペラであるので、ただただ歌手の声に酔いしれたいと思い、そしてまた、それが可能であったこの日の公演に、次の幕への期待が高まっていく。

第2幕では、終盤の聴きどころという六重唱に耳をすます。ルチアはルチアで自分の身の不幸を嘆き、アリーザ、エドガルド、アルトゥーロ、エンリーコ、ライモンド、それぞれが皆自分の主張を強く言い立て、思惑が見事に反目しあう。重唱といっても、調和というより主張のぶつかり合い。この登場人物たち、交わるところが見事にないものであるなぁ、と聴き入った。写真屋がこの記念すべき日を撮影するために、彼ら、そして大勢の客人たちを所定の位置に誘導する、その職業的な姿が彼らの関係の異常さを際立たせる。

第3幕、狂乱の場はもうさすが。アルトゥーロの鮮血の飛び散る純白の花嫁衣装のルチア(ルチアにせよ、白装束に白糸縅の鎧を血に染める碇知盛にせよ、白に無残に散る赤色から想起される悲劇の効果は計り知れない)。グラスハーモニカの不安定に揺らぐ不思議な音色が正気を失くしたルチアに共鳴し、狂気を拡散させる。

錯乱の中、エドガルドとの幻想の幸せに浸るルチア。彼女の身を何度も軽やかに回らせた喜びは、やがて様相を不吉なものに変化させる。自らの花嫁衣装の所々に飛ぶ赤い染みを振り払おうとするかの仕種をみせるダムラウ・ルチアは、狂気の淵を驚異的なコロラトゥーラで彷徨う。ここからラストのテノール・エドガルドのルチアを失った嘆きまでは、息もつかせぬおもしろさ。

白く顔を光らせるダムラウ・ルチアの亡霊は、輝ける不思議な魂。まだこの世に未練を残す魂魄が、エドガルドを黄泉の国に連れていってしまった。彼が短刀を自身に向けて持つ手にルチアは両手を添える。その先をそっと促しながら・・・


asahi.com 歌姫ダムラウ「ルチア」を語る 「心を癒やすのが使命」 METオペラ


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テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

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