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2011.05.14 (Sat)

「白鳥の湖」 サンクトペテルブルグ・バレエ・シアター(タッチキン・バレエ) イリーナ・コレスニコヴァ 5月9日 18:30 オーチャードホール

女優バレリーナとうたわれているらしいイリーナ・コレスニコヴァを初めてみる。もうすごい、陶酔の白鳥。女性の中でもとびっきり上等の部類。身体の芯から女性らしさに満ちている。男に、この女を手に入れたいと思わせてしまうような。

身体はもちろん細いのだけれど、ほどよい肉付きに胸元も豊か。柔らかくカーブを描くボディ・ラインが美しい。どんな方向、角度にも身体を曲げられるのでは、という身体能力の高さ、自在な表現力が手の内に。

腕に顔をこすりつけるような動きは、まさに白鳥の化身。不幸にして悪魔の手に落ち、その力に捕われ抗うことのできない運命的な弱さが感じられます。

王子に柔らかく身をゆだねる苦しみの中のとろけるような官能の表情といったら!・・・思わず唾をゴクリと飲み込んでしまうのだわ・・・そういえば、王子には全く目がいかなかった。すまん、王子。


黒鳥は黒鳥で、もう笑えるくらいすごい。ロットバルトと視線を交わすオディールからは、“まぁみてて、こんなウブな王子、すぐに落としてみせるから”、と聞こえてくるよう。罠にかけられる王子の方は、まるで赤子の手をひねられるように、オディールの魅力にズブズブはまってゆきます。

白鳥の幻影がみえたときには一瞬しまった、とでもいうかの怯えをみせるオディール。それでも、すぐに自分を取り戻す。そんなところにも物語がみえます。そして、ダブルをまぜるグラン・フェッテの勢いは女王の風格。盛り上げ方を知っている回り方。

策略どおり王子に愛を誓わせたこの黒鳥は、王子を高らかに嘲笑し、勝利の内に、贈られた花束を一気に辺りに撒き散らして去っていく。凄すぎ。このインパクト!なんとドラマティックだこと!世間知らずの王子など、ひとたまりもありません。


最終幕では再びたおやかな白鳥に戻るイリーナ。その嘆きからは、涙がツーッ、キラキラッ、と落ちるのがみえるよう。心が泣いています。けれども、このオデットは、弱々しいようで実は芯が強い。ロットバルトの前に自分の身を盾とし愛する王子を守り、悪魔にか細い一撃まで加えるのです。

それでもとうとう力尽き、地に伏してしまうオデットの姿に俄然奮起した王子は、ロットバルトの羽をもぎ、ついには悪魔を倒してしまいます。

王子に抱き起こされ、しなだれかかるオデット、そこに射す朝日。あっ、私の羽根が人間の腕に戻っている。私、人間に戻れたのね、とこの日の公演で一番可愛らしい喜びの笑みをみせるイリーナ。清々しい、明日への希望を感じさせる笑顔でありました。


ジークフリード王子のオレグ・ヤロムキンも正統派の美しさがあり、美しいテクニックもみせるのだけれども、女性の色気をムンムンさせているコレスニコヴァの前ではまるで子供のよう。そのコレスニコヴァのほうは、ヴァリエーションより、男にからんで踊るパ・ド・ドゥのほうが魅力がより引き立ち、ゾクゾクッとさせられました。カンパニー的には、白鳥の群舞よりキャラクターダンスのほうが生き生きと輝いていた。道化のアレクサンドル・アバタロフ。跳躍力も回転力も高く、しかも品がいい。


テクニックに裏打ちされた見事な表現力、それを最大限に発揮することのできる抜群の肢体の持ち主、イリーナ・コレスニコヴァ。女優バレリーナの名を冠するにふさわしい、説得力のある物語を紡ぎ出す力のある、個性豊かな素晴らしいバレリーナでありました。


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テーマ : バレエ - ジャンル : 学問・文化・芸術

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