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2011.04.20 (Wed)

「ラ・バヤデール」 東京バレエ団 4月14日 18:30 東京文化会館 その1

東京バレエ団のマカロワ版「ラ・バヤデール」公演。当初ゲストの予定であったフリーデマン・フォーゲルは、東日本大震災の影響によるドイツ政府の渡航自粛勧告を憂慮したバレエ団より来日許可が下りなかったため、また、レオニード・サラファーノフはリハーサル中の膝の怪我のために、来日ならず。新たなゲストとして迎えられたのは、マシュー・ゴールディングにイーゴリ・ゼレンスキー。4月14日は、イーゴリ・ゼレンスキーのソロル、小出領子さんのニキヤ、田中結子さんのガムザッティという組み合わせ。宝石のように美しく洗練された舞台だった。これほどの美しさを東京バレエ団の公演で感じることができたのはとても幸せ。主役の二人が素晴らしかった。

小出領子さんのニキヤは小柄であっても、ゆったりと大きく使われる腕に空間の広がりを感じさせられる。大僧正の求めも毅然と断る態度が美しく、選ばれた舞姫としてのプライドが覗く。美しくしなやかな上半身は、物語を雄弁に語る。

そして、ソロルのゼレンスキー。空中にとどまるかのような跳躍、そして美しい回転には、これこそがバレエの本質である美と感服させられる。安定した風格。小出さんのサポートも自然でとても美しい。物語を語る身体である。空気を跳ね上げるように蹴りだす脚先までの美しいこと。

この二人のパ・ド・ドゥでは、舞台いっぱいに二人の喜びが広がる。抱き合う二人から芳しい愛が香り立つ。ソロルに空中高く差し上げられる小出さんのニキヤは、手脚の先の先まで美しく伸ばされ、ソロルに身をまかせる愛の恍惚が浮遊する。歓びに溢れるニキヤが美しく輝く。これほどの愛の交歓が何故、後に悲しみに形を変えるのか。待ち構える悲劇を逆に際立たせてしまうかのような、美しい二人の愛の場面だった。

どんどん物語を紡いでゆく小出さんの踊りが心の動きを丁寧に表現するため、ガムザッティに刃物を向ける激情に至るまでのニキヤの心情もより理解しやすい。

ガムザッティとソロルの婚約の場のニキヤの嘆きからは、心に涙が流れるのが見えるよう。悲痛な哀切感に満ちている。そんなニキヤの顔を正視することができないソロル、なんて奴だと思いたいところなのだけれど、そのなんて奴でさえ、美しく演じてしまうゼレンスキー・・・

第2幕では、明かりを落とした舞台にこの世のものでない美しい幻想の世界が広がる。美しいコールドの幻影の世界、影の王国が、現実ではない世界に観客をもいざなう。

その中でのニキヤとソロルの邂逅、そして踊る姿がもう美しくて美しくて。小出さんとゼレンスキー、二人とも、音楽性の豊かなそれぞれの身体が言語となり、心の内が細やかに伝わってくる。この美しさこそが、芸術として存在するバレエの特質であるなぁ、とうっとり。小出さんの内面から滲み出る美しさはニキヤの哀しみの中のプライドを見せ、ソロルから去る鋭く速いピケターンからは、ニキヤの心の叫びが聞こえてくるよう。

第3幕、ソロルとガムザッティの婚礼にニキヤの亡霊が哀しく絡む場面は、ソロルのニキヤへの思いがニキヤを実態化させたのだろう、という現実感を伴った。それほどに、小出さんとゼレンスキーの表現には説得力がある。神殿崩壊のカタストロフィーの後に広がるのは救済の世界。空には雲が渦巻き、その中央には明るい日が射している。この天上の世界で、ソロルはニキヤに今度こそ忠誠を誓うようにひざまずく。ニキヤの上げた両腕からたなびくヴェールはソロルへと繋がる。彼女の視線はソロルを捕らえる。二人の愛は、魂の世界でようやく成就したのだ。(続く)


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テーマ : バレエ - ジャンル : 学問・文化・芸術

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