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2011.04.02 (Sat)

吉田 都から子どもたちへ贈る夢のステージ「シンデレラ」 その2

鈴木稔さん演出・振付の「シンデレラ」は、幼い頃親しんだ「シンデレラ」の絵本を一頁ずつ開いていくようにどこか懐かしく、子供の頃の記憶が少しずつ呼び覚まされるような、そして、シンデレラとその周りの世界が、絵本の平面の中から目の前にポンッと飛び出してきて生き生きと動き出しているような印象を受けました。

継母と義理の姉たちに邪険に扱われ、けっして幸せな境遇にはないシンデレラ。彼女は、貧しいおばあさんにパンを差し出し、お友達のねずみさんにはチーズを分けてあげる優しく思いやりのある温かい心を持っています。その美しい心はシンデレラを飾る何よりもの衣装。それが、美しいものを見抜く力のある王子の心を捉え、めでたく二人寄り添うハッピーエンドまで、ごく普通の等身大の女の子が、生来持つ清らかな心で幸せをつかむ夢物語が展開されます。シンデレラを愛らしく可憐に演じた吉田都さんの表情は、この夢物語を説得力をもって鮮やかに舞台の上に甦らせていました。

貧しいおばあさん、実は仙女の魔法の世界の広がる中、お友達のねずみさんに踊りを習い、嬉しそうに夢中になって踊り出すシンデレラの生き生きとした表情といったらどうでしょう。足音もしない羽根の生えたようなステップで、妖精たちの間を軽やかにすり抜けて行く姿はまるで重力を感じさせません。絵本の中の姿がそのまま実際に動き出したようです。

このシンデレラは、舞踏会で王子にきっと一目で恋に落ちたに違いないのだけれど、積極的に王子にせまることはできません。ねずみのお友達に背中を押され、ようやく王子に近づくことができました。それでも、戸惑い、恥じらい、王子を見上げてみても、まだまだ笑顔をみせることはできません。王子にふわりとリフトされ、サポートされながらくるくるピルエットで回るうちに、シンデレラの心は少しずつほぐれてきました。王子のシンデレラを見つめる優しい表情に、シンデレラも次第に打ち解けた笑顔を見せ始めます。シンデレラの胸はだんだんドキドキと高鳴り、瞳もキラキラと光を放ち、今やもう、王子のハンサムな表情しか目に入らなくなってしまいました。そのシンデレラの心の揺れ動きを、都さんがなんと見事に表現していたこと!

シンデレラと王子は、まるで二人で一つのハートを描くようにお互いの片腕を大きく広げ、じっと見つめ合います。 恋に落ちた二人のみせるパ・ド・ドゥはもう夢のよう。都さんのシンデレラは音に身をゆだね、そこに喜びを生み出していきます。ポワントのトウが美しく正確に床を刺し、これこそバレエという美しいポーズが連続する中に、大きな幸せが満ちてきます。ヴァレリー・ヒリストフの鷹揚で育ちの良い王子が、シンデレラのときめく心を受け止めます。童話のエッセンスが詰まった、ファンタジーに満ち満ちた世界が繰り広げられるこの上なく美しい場面でした。

12時の過ぎてしまった舞踏会でシンデレラの残したガラスの靴をたよりに、愛する人の姿を再び王子はみつけます。シンデレラは自分の貧しい身なりを気にするけれども、その姿のままでいいのだよ、という王子の愛の眼差しの中、きらめく瞳のシンデレラと王子の二人は軽やかな心で明日へと愛を育んでいく、そんな印象を受けたラストシーンは、キラキラと美しく輝いていました。


シンデレラととっても仲のいい心優しいねずみのお友達。キャスト表によると、着ぐるみのお友達が小平浩子さんと新田知洋さんだったのでしょうか。人間に変身したお友達は林ゆりえさんと福原大介さん。物語の温かい空気を作り上げていました。


吉田都さんの舞台は、このあと5月の英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団の公演でみることができるのがとても楽しみです。都さんのタイターニアで、被災地復興支援のチャリティー公演(「真夏の夜の夢」&「ダフニスとクロエ」5月17日(火)18:30 ゆうぽうとホール)が1つ追加されたというこの来日公演。あとひと月と少し、待ち遠しいです。


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テーマ : バレエ - ジャンル : 学問・文化・芸術

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