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2011.01.07 (Fri)

「トリスタンとイゾルデ」 新国立劇場 1月4日 14:00 その3


新国立劇場 2011.1.4   


「トリスタンとイゾルデ」、実際に舞台でみるのは2回目。前にバレンボイム指揮のベルリン国立歌劇場でみた時には、延々と綴られる愛に、なんだかわかったような、わかんないような・・・たぶん途中で意識を失ってしまったような記憶も・・・。満を持してのぞんだ2度目。半音進行の波に襲われ、いつ終わるともしれない旋律の連なりに最後まで捕らわれ続けた今回・・・

そういえば、第一幕冒頭、オーケストラが物憂げに波のように寄せては返す前奏曲の響きの中、上手より登場した骨組みばかりの無気味な風情の船、舞台の上で向きを変える際、上がる紗幕に引っ掛かりながらか、メリメリバキバキと不穏な音を響かせていた。まるで物語の行く末を暗示するかのような効果音。年末にみた家人に後で聞くと、その時にはそんな音は聞かれなかったらしい。

第一幕からして長大。自分の感情のおもむくままに歌うイレーネ・テオリンのイゾルデ姫。テオリンの大きな身体に対して、細い身体のエレナ・ツィトコーワのブランゲーネは、絶えず神経質そうな動きを繰り返す。イゾルデからもクルヴェナールからも全く軽くあしらわれるブランゲーネの姿が、主人イゾルデ姫の自尊心をより高くみせる。まるで延々と駄々をこね続けているようにも聴こえるイゾルデ姫。テオリンよりも更に体格の大きさで上回るステファン・グールドのトリスタンは、姫の駄々をひたすら耐える忍耐強い勇士。二人の間の愛への障壁をすべて取り除くのはブランゲーネがすり替えた媚薬である。相手に愛を打ち明ける、ただただこの単純なことのために媚薬は、二人の間を妨げる何もかもを一瞬の内に取り払ってしまう。それが幸せにつながるのか、あるいはそうでなかったのかは、ブランゲーネの嘆きが指し示すところである。

小山のように大きなイゾルデとトリスタンの二人のスタミナがどこまでも続く、第二幕の長い長い愛の交歓。これだけの愛の歌を二人で一体どれだけの長い時間歌い上げていたことか。舞台を飾るのは、愛の行為そのものを象徴するのか、中空に浮く円環にそれを貫く円柱。背景の夜空にはいつしか星が美しく浮かび上がる。「降り来たれ、愛の夜よ O sink hernieder, Nacht der Liebe」・・・二人の声がゆったりと絡むつく世界は、もうこの世のものとは思われない。愛は陶酔の次元に飛んで行き、夜空の不可思議な空間に飲み込まれる。歌手とオーケストラと演出と、その全てが愛の世界に浮遊する。愛の官能に差し挟まれるブランゲーネの「ご用心」の歌声も、天上からの響きのように美しい。(続く)

 
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テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

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