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2011.01.06 (Thu)

「トリスタンとイゾルデ」 新国立劇場 1月4日 14:00 その2


トリスタンとイゾルデ 2011.1.4


闇の中に巨大な月が次第に姿をあらわし、少しずつ上昇してゆく。月影が水面に揺れる。そのさざ波の不安定なムーヴメントが、今にして思えば「トリスタンとイゾルデ」、この長大な愛の物語を全編に渡り支配していたような印象さえ受ける。

解決をみずに、どこまでも移ろいゆく旋律、ハーモニーの漂流感は、トリスタンとイゾルデの、光の中ではけっして成就することのできない愛の行く先を告げる。大野和士さんのタクトの先から産み出されてゆく演奏は、彼らの心理にぴたりと寄り添い、うねるように、そして、時にはゆったりと大きくたゆたい、物語を先へ先へと運んでゆく。官能性をエキセントリックに突出させることはない。場面に最適のテンポ、強弱、抑揚が、トリスタンとイゾルデの感情の機微を美しく細やかに織り成していく。余りにもごく自然に愛の模様が編み出されてゆくので、劇場の空気を震わせるオーケストラの響きがそのまま、彼らの念と転化して空間を満たしているような錯覚に襲われる。そして、その空間一杯の彼らの感情に、自分の身もいつしか大きく包み込まれるという、これまで味わったことの無いような不思議な感覚を抱く。(続く)


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テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

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