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2010.10.12 (Tue)

マーフィー版 「白鳥の湖」 オーストラリア・バレエ団  10月9日 15:00 東京文化会館 その2

冒頭、静けさの中、白の長い衣装のオデットが、後ろ姿から覗かせる白鳥の羽の動きに一気に惹きつけられる。絶えず怯えているオデット。一方、ロットバルト男爵夫人は、いきなり王子に絡み昇り詰めてみせ、自信を持って男を所有する奔放な姿を印象づける。スキャンダラスな始まり。

第1幕では、オデットの狂乱が恐ろしくも心に残る。人生で一番幸せなはずの結婚式で、オデットは、まことに惨めなパ・ド・ドロワ~愛する夫の目は新妻オデットを見ることはなく、彼の視線は常にロットバルト男爵夫人に注がれている~を経験する。オデットが、そこら辺りにいる若い男達に次から次へと身を投げ、渡り歩く(舞う)自暴自棄な姿からは、無力ゆえの痛々しさ、そして刃の上を渡るような危うさが感じられる。

成就されない愛の行方は哀れなものである。王子との結婚式を迎えるまでは、おそらくはお伽話に出てくるような幸せな愛を、自分と王子の間に夢見ていたに違いないオデット。王子の心が実はロットバルト男爵夫人の元にあるのを知ることは彼女には酷なこと。王子の気を引くのに、もはやまともな手段をとることのできないオデットの行動はまことに痛ましい。

黒鳥が輝かしいフェッテを披露するはずの音楽で、オデットは狂乱のフェッテで、宴の客人の間を飛ぶように、嵐のように、竜巻のように、狂ったように舞う。若い女性の、夫の愛が自分の元に無いことに愕然とし苦しむ姿は、痛々しくてみていられない。

王子は、異性を愛するという行為を、真っ当ではない道で成し遂げようとする。ロットバルト男爵夫人も同類である。人は、人として進むべきでない道を敢えて選んでしまうと、そこに必ずや波乱を起こし、近しい人々を見事に巻き込んでしまうという罪を犯す。そうなるとわかっていてもその道に足を踏み入れてしまうのが人間であるし、だからゆえにそこにアートが生まれるのであろうな、しみじみ、などと思った第1幕。(続く)


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テーマ : バレエ - ジャンル : 学問・文化・芸術

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