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2010.08.03 (Tue)

「椿姫」 トリノ王立歌劇場 8月1日 15:00 東京文化会館

なにかと衝撃的であったナタリー・デセイの「椿姫」。ヴェルディのオペラ「椿姫」を生でみるのも初めてだし、デセイを生でみるのも初めて。

コロラトゥーラをこれほど精密に制御して歌うことのできるソプラノというのは、今の時代きっとなかなかいないのだろうな(な~んて、他の歌手のことなどそれほども知らないくせに言い切ってしまう・・・)、と思わせるナタリー・デセイの歌唱。

まるで、井戸水に手を打たれ、それを“Water”と電撃的に理解したヘレン・ケラーのように、アルフレードへの愛に目覚めたデセイ。「花から花へ」では、長い一息の中に、限りの無い技巧をこらし、自在に自分の声をコントロールしてみせる。また、死を予感しすべて終わりと歌う「さらば、過ぎ去りし日よ」では、続く限りどこまでも美しくのばし続けた最後の一音も見事。

このデセイのヴィオレッタは、パリ社交界のセレブの男性を相手とする高級娼婦というよりも、少年のようである。これが2つ目の衝撃。自分やフローラのサロンでは、装飾やカッティングの美しいドレスをとりあえず着こなしてはいるのだけれども、嬌声をあげて登場したその身のこなしはまるで元気いっぱいの男の子。パリを離れた郊外、シャツ姿でアルフレードに飛びつく彼女はやんちゃないたずらっ子そのままである。優雅さからは程遠い。どうやらこれは、ナタリー・デセイというスター仕様の「ラ・トラヴィアータ」であるらしいことが朧げながらにわかってくる。

3つ目の衝撃。これほどまでに舞台の上で繰り広げられた物語が“虚”であることがあからさまになった公演を他に知らない。つい先ほど舞台の上で儚く息絶えたヴィオレッタを演じた歌姫が、カーテンコールにまるでコミックの主人公のような駆け方でおどけて飛び出してくる。さらに、ノリノリで客席に拍手を促し、手拍子で盛り上げてもみせる。来日公演の最終日ということもあり、一気に緊張が解けた姿だったのだろうか。デセイに確かめる術もないのでこれはわからない。

先日、新国立劇場バレエ「椿姫」でマルグリッド(=ヴィオレッタ)を踊ったスヴェトラーナ・ザハロワの、カーテンコールでのまだ役の抜けきらぬ美しい姿に感銘を受けたばかりであるので(オペラとバレエというジャンルは違うものの、椿姫の心を演ずる点では相違はないであろう)、デセイのその姿は自分には刺激が強すぎ、今日まで悄然とした日々を過ごしていたのであるよ。デセイがパリ・オペラ座でこれから歌う予定というムゼッタなどは、是非聴く機会があれば、と願うのだけれども・・・


プログラムはこの日も売り切れ。会場には早くに着いたのだけれど。公演当日にプログラムを手に入れることができなかったのは、光藍社の「草刈民代 Esprit~エスプリ~ ローラン・プティの世界」の公演の時以来2度目であるなぁ。

そういえば、自分の近くの一幕目からずっと誰も座っていなかった空席に、休憩の終わる直前に腰掛けようとした人がどうやら係員に止められていた様子だったのは、他席からの移動だったのかしら。こうした場面を目撃したのは初めてだったので、ちゃんとチェックされているのね、とびっくり。


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テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽

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